約1か月ほど前に、突然Nさんから電話があった。突然というのは、Nさんは長野県の南信に居住している方で、約15年ほど前に経営していた会社を清算した元社長である。その清算結了までの手続きを事務所でやって、その後は疎遠になっていた方だからだ。
Nさんの電話の要件は仕事(?)の依頼だった。
「相続の手続きをやっていただけますか?誰の相続かというと、自分の相続です。年内一杯ぐらいと余命宣告されています。今までの関わりからぜひお願いしたいのです。」
Nさんの会社とは長いお付き合いがあった。先代の社長時代からのお付き合いで、会社の決算のために南信まで出張したときに、先代の社長から2段重ねのうな重を出していただいたことがなぜか今も忘れられないでいる。
Nさんからの電話で、忘れていたNさんの会社のことも一気に思い出した。お互いに年を重ね、しかし何かの時にはどうしているだろうか・・・と心にとめていたこともあったに違いない。
Nさんからの電話の内容に言葉が出なかった。
「ご安心ください。長くNさんとはお付き合いさせていただいておりました。Nさんの人生の最後の整理をいたしますから安心していてください。」
やっと伝えたこの一言。
Nさんは、「ああ、これで安心しました。気がかりが一つ終わりました。妻には、何かあったときに先生に連絡するように言っておきます。」
どんな思いでNさんは電話をかけてきただろう。今までお互いに積み重ねてきた人生という歴史を、最後にもう一度交じり合うことができるという深い想いを理解してくれる職員も事務所にはいるということが、Nさんにとっても慰めだと思う。
一昨日、Nさんは亡くなった。

















