事業承継「脱ファミリー化」

 帝国データーバンクが発表した2024年の県内全業種約4705社に行った後継者動向調査。

 後継者が「いない」または「未定」が51.9%。

 代表者年代別の後継者不在率は、「70代」が27.1%、「80代」が23.9%であった。他の年代より後継者不在率は低いが、後継者の選定・育成ができないまま、代表者の「不測の事態」で活動できなくなるリスクもある。

 2020年以降代表者交代が行われた企業のうち、前代表者との関係性は、「同族承継」40.9%、「内部昇格」35.4%、「M&A等」17.4%、「外部招聘」4.7%。

 後継者候補については、「非同族」37.6%、「子ども」36.7%、「親族」23.0%、となり、事業承継は「脱ファミリー化」の傾向にあることが分かった。

 事務所のクライアントも事業承継に取り掛かっているところが多いが、後継者不在のため解散する企業も多い。今のところ「非同族」を目指している企業は見当たらないが、少子化問題も絡み、今後もクライアントと相談しながら進めていく必要性を強く感じている。

 代表者交代だけでなく自社株をどう受け継いでいくかも大きな課題である。

Z世代の価値観

 自分の税理士人生集大成として、クライアントの事業承継のサポートに力を入れている。年に2回ぐらいの勉強会を行っており、今回は、農林中央金庫の島田長野県担当部長から「明るい職場づくりに向けて~Z世代の価値観とは?~」という演題での講義をいただいた。

 X世代は60歳~44歳、Y世代は44歳~29歳、Z世代は29歳以下に分けられる。60歳超の人を新人類と、参加したメンバーは言っていた(笑)。参加メンバーのかつての経営者または現経営者にあたる人たちだ。

 厚生労働省がまとめた2023年若年者雇用実態調査によると、若年社員のうち「転職したい」と答えた人は31.2%。性別で、男性は「思っている」が27.7%、女性が「思っている」が35.1%。年齢階層別ではZ世代が35.0%であった。

 島田氏によると、Z世代の価値観は ①デジタル ②社会動向 ③経済動向 が大いに影響しているとのことで、

・働く目標・・・仕事を通じた社会への貢献

・働く組織・・・フラット組織、競争よりチームで助け合い、協力

・働く意識・・・ワークライフバランス、ウェルビーング

を求めていて、X世代や新人類(60歳超)の生きてきた価値観と様変わりしている。

 厚労省の調査結果でも、転職したい理由は「賃金の良い条件に変わりたい」が59.9%、「労働時間・休日・休暇の条件が良い会社に変わりたい」が50.0%となっている。

 また雇用形態別の満足度として、正社員は「雇用の安定性」66.4ポイント、「職場の人間関係、コミュニケーション」57.3ポイント、「仕事の内容・やりがい」55.2ポイント。正社員以外は「仕事の内容・やりがい」が59.9ポイントだった。

 今春、新卒者が入社してくる。今回の研修が、明るい職場づくりに向けた方向性を見定める一つの参考になればいいなと思っている。

申告漏れ相続税課税価格

 関東信越国税局が行った2023事業年度の相続税調査のうち、長野県内の調査件数は143件。うち申告漏れ件数は122件、申告漏れ課税価格は44億円だった。追徴税額は、本税が7億300万円。

 課税価格の総額は2409億円で、相続財産の構成比は、現金・預貯金等が43.0%、土地24.0%、有価証券14.1%、家屋5.1%。

 相続税の申告をする際に、この預貯金の調査が一番時間がかかる。手は抜けない。それを相続人がどれだけ理解できるか・・・であるが、こうした資料で説明するのも一つの方法だろう。

申告漏れ所得上位10業種

 関東信越国税局管内が実施した2023事業年度の所得税と個人事業者の消費税調査での結果が発表になった。申告漏れ所得上位10業種は下記の通り。

1 内科医 3,133万円

2 経営コンサルタント 2,035万円

3 ブリーダー 2,006万円

4 歯科医 1,751万円

5 溶接 1,666万円

6 製図設計士 1,600万円

7 施設園芸農業・果樹 1,506万円

8 システムエンジニア 1,363万円

9 コンテンツ配信 1,336万円

10 ダンプ運送 1,335万円

 上記とは別に、所得税無申告者を1011件調査。1件当たりの申告漏れ所得金額は2,294万円で、申告漏れ所得金額の総額は232億円。

 消費税無申告者の調査は1384件。追徴額の総額は37億円。消費税の還付申告者の調査は128件。追徴税額の総額は2億円。

 この結果をどう受け止めるか。無申告者からの追徴税額が多いのは当然だが、この点を重点的に調査してもらいたいと誰もが感じるだろう。

長野県に「住みたくない」理由

 地元紙が行った調査結果が紙面に掲載されていた。県内公立高校3年生2千人を対象にした男女共同参画に関する意識調査だ。

 「県内に住みたくない」と考える女性は15%で、男性9%。理由はいろいろあるが、「性別を理由に何かをやらなくてもよい、やらなくてはならない」などと言われたこともあり、性別による偏見や差別などを理由に地元から離れたいと思っている人が7%いた。

「住みたくない」理由に

① 他に住んでみたい地域があるから

② 娯楽や遊べる場所が少ないから

③ 交通が不便だから

④ 希望する仕事や魅力ある仕事がないから

⑤ 地域の人づきあいが煩わしいと感じるから

 以上の項目は今までも挙げられてきたが、 性別による偏見等の理由で地元から離れたい・・・ということがあるのは、今まで意識をしたことがなかった。

 上記については、どのように対応していったらよいかが議論されてきていたが、性別役割意識も影響していることについては、県民全体が変わっていかなくてはならない部分だ。

 経営者側として、働きやすい環境を整えるということに視点が集中していたが、無意識の性別役割意識も変えていかなくてはならないことに気づいた。

 今年の春、採用した2名の新卒者が入社する。働く環境を整えるとともに固定的な性別役割分担意識をのぞいていかなくてはならないことを、改めて感じた。

新春講演会・賀詞交歓会

 長野県経営者協会主催の新春講演会と賀詞交歓会が開催された。

 碓井会長のあいさつでスタートした。要旨は下記の通り。

『新しい知恵を生み出し、新しい価値を作り出す。国を豊かにし、安全保障を担保する。いかに世界に対する日本の存在感を出していくか。

 また若者、女性を登用し、競い合いながら切磋琢磨して国を豊かにしていくことが必要。英知とともに、従業員とともに入社する若者たちの期待に応える環境を作ること、しっかりした期待できる環境、価値を作り出すことによって、企業、経済が成長する。

 今まで厳しい環境の中、自然とともに産業を営んできた。これからはその延長線上ではなく、新しい価値を生み出していくのだ。そうした経営者の覚悟が問われる1年である。』

 一言一言が自分の胸に落ちた。、企業や国が発展するために新しい価値を生み出すことが必要であり、経営者の覚悟が問われる1年。

 自分にとって、これからの1年の在り方をどう見出しどんな覚悟をもって歩んでいくか、その姿が問われていくのだ。企業規模の問題ではないと思っている。

 新春講演会では、元女子バレーボール日本代表の大山加奈氏が「繋ぐ~バレーボールが教えてくれたこと~」という演題でお話しをいただいた。

信州日経懇話会・第5回例会講演会

 信州日経懇話会を毎回楽しみにしている。出席者もリピーターが多く顔なじみになっているが、それだけに皆さん惹かれるものがあるのだろう。

 今回は、ミネベアミツミ株式会社 代表取締役CEO 貝沼由久氏 が「ミネベアミツミ、2.5兆円企業への道筋」という演題で講演してくださった。

 東京プライム市場に上場されているミネベアミツミは、ベアリングなどの機械加工品事業、電子デバイス・半導体・小型モーターなどの電子機器事業、自動車部品・産業機械・住宅機器事業等を行っている。これらを8本槍(コア)とし、その定義を、

1 大きな市場の中のニッチ市場であること

2 その製品は簡単な技術革新ではなくならない

3 当社の強みが活かせる製品であること

4 「槍」とされる各製品間でシナジーヶあること

としている。リスク分散の観点から、シナジーのある複数の事業を持っているのだ。

 そうした中の経営者としての転機と節目はタイの大洪水とM&Aであった。

 リスクマネジメントがしっかりできているか。例えば、一生懸命勉強して明日が試験というときに、朝起きたら大雪で動けなかったら、あなたはどうしますか?とか試験に行ったら筆記具がない、というときにどうしますか?と問われた。成功は何かあったときにすぐどう対応するかである。

 2011年のタイ大洪水で被害を受けたときにも、リーダーが先頭に立って動いた。安全のために引き上げてほしいと伝えたが、「私たちの工場だから自分たちが必ず守る」と復興に注力してくれたそうだ。

 何か想定しないことが起こったときにどう対応するかによって成功の道がわかれる。

 社是は「五つの心得」に基づいた透明度の高い経営で、「五つの心得」とは下記の通り。

1 従業員が誇りを持てる会社でなければならない

2 お客様の信頼を得なければならない

3 株主の皆様の期待に応えなければならない

4 地域社会に歓迎されなければならない

5 国際社会の発展に貢献しなければならない

 成功する経営者の心得に改めて惹かれた時間であった。

ヤマを動かそう!信州・公開討論会

 「ヤマを動かそう!信州」という団体が、「国会議員とジェンダーについて考える」というテーマで公開討論会が開催された。私はWEBで参加し、大変いい刺激をもらったと思う。

 1999年の国連総会で採択された「女性差別撤廃条約選択議定書」について、日本政府は審議に参加し決議に加わったが、まだこれを批准していない。2024年10月には、国連女性差別撤廃委員会(CEDAW)より、日本政府への懸念事項と勧告が出され、2年以内に4項目について進捗の報告を求められている。

1 選択的夫婦別姓のための法改正

2 国会に女性議員を増やすための暫定措置としての供託金減額

3 緊急避妊を含む安価な近代的避妊法への十分なアクセスを提供。16歳、17歳の少女が避妊薬にアクセスする際の親の同意要件の撤廃を含む。

4 人口妊娠痛絶を求める女性に対する配偶者の同意要件を撤廃するための法改正

 こうしたことを踏まえ、長野県関係の国会議員との意見交換会が行われたのだ。ただ残念なことに、立憲民主党議員5名が出席され、自民党議員が一人もいなかった。超党派で話ができればよかったのだが、皆さん別に予定があったようで・・・。

 いろいろな意見交換がなされ、各議員も各自の考え方を示してくれた。皆さん政治への女性参加を強調していた(2年以内に報告義務が課せられている2項目目にあたる)が、心からそう思っているのだろうか・・・と感じたこともあった。

 選択的夫婦別姓については、日本の社会の在り方を大きく変えるものだが、自民党以外は全党賛成している。自民党は、美しい日本の伝統を崩すことになるとか、戸籍制度がなくなってしまうというのが主な理由だ。驚いたことに、28年前から長野県議会の中でも「夫婦別姓」についての質問が出ていたそうだ。

 報告が義務付けられた項目3と4については、「今日は女性議員がいないから、まともに答えられる人がいない。なかなか自分のこととして捉えられないのでフラットな議論ができない」という議員側からの意見があった。

 この意見については、非常に疑問を感じてしまった。こういうことは女性議員に任せるから、という意味に捉えてしまった。女性議員を増やすことは必要だが、その必要性の理由がこういうこと?これこそが女性差別に感じた。議員に限らずだが、すべての人が自分のこととして捉え、知識がなければ勉強しながら課題解決に向かっていくことが必要だ。

 包括的性教育が今までなされてこなかったことも、こうした考えが出てくる要因でもあるだろう。早い時期から子供たちに包括的性教育を実施いていく必要があり、また年齢問わず大人にも実施していく必要があるだろう。

 この討論会で感じたのは、出席された国会議員の気持ちの中で、どれだけジェンダーを意識して国民のために働いてくれているのか、どうなのかなあ~ということだった。

関西経済連合会との懇談会

 「公益社団法人2025年日本国際博覧会協会」との懇談会の後に、「公益社団法人関西経済連合会」との懇談会が引き続きあった。場所は北区のうめきたサイトにあるグラングリーン大阪である。

 大阪駅まで移動し、そこから第2再開発地域にある会場まで徒歩で行った。素晴らしい公園が整備されていて、その中を歩いていくと大きなビルが出現。素晴らしい環境が整備されている地域だ。

 「2025年大阪・関西万博と夢洲・関西のまちづくりについて」というテーマでのプレゼンがあった。先に万博に関しての懇談があったので、どちらかというと街づくりの話を中心にしてもらった。

 万博後の夢洲整備計画は、建物を取り壊し、更地にして大阪府に変換することになっている。関西経済連合会からの提言を受け入れることもあって、夢洲まちづくり基本方針ができている。

 第1期として70haを総合型リゾート(IR)を中心としたまちづくり、第2期は60haを万博の理念を承継したまちづくり、第3期は、第1・2期の取組を活かした長期滞在型のまちづくりが全体のコンセプトになっている。

 2023年4月に国によるIR区域計画認定を受けていることは周知の事実だ。

 懇談会のために大阪駅から徒歩で移動した区域はうめきた2期区域である。「みどりとイノベーションの融合拠点」を目標にまちづくりを行っている。関経連も参画しているとのことであった。この地域は人口流入も多い地域となっているとのこと。やはり魅力あるまちづくりができているところは、自然と人が集まってくるのだ。

 ここは関西の交通結節点であり、多様な関係者が集まるよう工夫され、大企業、中堅・中小企業、スタートアップ、大学等の研究開発への相談・サポートや、各種マッチングやセミナーなどを共同開催する拠点にもしている。

 長野駅前の再開発計画はどうだろうか?この大阪「うめきた」に学ぶことが多いと思った。

 この懇談会は非常に面白かった。

公益社団法人2025年日本国際博覧会協会との懇談会

 大阪万博が2025年4月13日にスタートする。色々な面でマスコミの報道があるが、長野県経営者協会は、大阪万博の準備及び開催運営を行う「公益社団法人2025年日本国際博覧会協会」との懇談会を行った。

 場所は、万博会場に近い大阪府咲洲庁舎である。

 大阪駅から何度か乗り換えてトレードセンター前駅で下車。

クリスマス飾りもあった。

庁舎への長い連絡通路を進んでいく。

駅から7分ぐらいで大阪府咲洲庁舎に到着した。

中に入ってみると素晴らしい空間が広がっていた。

連絡通路は2階につながっていたが、「さきしまコスモ展望台」入り口は1階からエスカレーターで。

一つ一つがおしゃれかな。

このエレベーターは最上階まではいかない。中に入っている庁舎のオフィスまで。ここで仕事をしている職員の人たちって、きっと快適だろう。

壁に庁舎案内が掲示してあった。

 懇談会前に時間があったので、「さきしまコスモ展望台」まで行ってみた。平日とはいえ、2~3人の見学者しかいなかった。大阪市内を高いところから見ることができ、建設中の万博会場も見ることができたが、何の説明版もなく、何が何だかわからなかった。これは非常に不親切だと思った。

これだけは分かった。万博会場だ。大屋根リングが見えたから。

大屋根リングが全長2㎞、高さ12m、内径約650mの世界最大級の木造建築物となる。左側はウォータープラザになる予定。

主なるパピリオンは出来上がってきている。

右に見える白い橋は、開催中のVIPが通過するために用意された。改定を通っている地下鉄か船でしかパピリオンの島に行きつけない。

懇談会においては、瀬戸口強一氏がプレゼンを行ってくださり、その後質疑応答があった。

 2025年万博が目指すものは二つある。一つ目として持続可能な開発目標(SDGs)達成への貢献、二つ目として日本の国家戦略Society5.0の実現だ。

 「いのち輝く未来社会のデザイン」はSDGsであり、未来を幸せにするための世界の祭りということであった。各パピリオン、各国はSDGsの主張をしている。その上にビジネスが乗っている。それらを達成するための Society5.0 であると説明をいただいた。

「万博」では、新しい技術や商品が生まれ、そうした意味でもビジネスにつながるきっかけにもなる。

万博で未来がどう変わるのか?もう変わっているという。例えば岩谷産業が開発した水素船。DX万博が始まっているのだ。

窓の外を見たら、偶然にもその水素船が航行していて、特に瀬戸口氏は感動していた。私も感動した。

 約2兆円の経済効果が見込まれるという。大阪・関西が万博のテーマに沿った新たなイノベーションで発展し、次世代のクリエーターが、自らの才能を世界に向けて発信できることも万博の魅力であるとのことであった。

 残念なことに、何となくいいことしか出てこなくて、埋め立て地が会場になっていることの防災についての説明は、余りはっきりしなかった。南海トラフ地震のために、高い防波堤を立ててあるという説明であったが、具体的に視認することができなかった。

 やっぱり課題はいろいろあるのかもしれない・・・というのが個人の感想。