東又谷・赤倉谷

 剣岳北方稜線をなんとしてでも繋ぎたい。残っているのは、南駒ヶ岳から南の1801メートル地点から毛勝山北方までだ。途中にピークをなすのは、滝倉山、ウドの頭、西谷の頭があって最後天国の階段を上り詰めて毛勝山北方へ至る。この間を何回かに分けて稜線をつなぎたいと思っていた。
 今回は東又谷から作之丞谷を遡行し滝倉山へ。1801m地点をピストンし、ウドの頭を越えて平杭乗越から平杭谷を下降して戻る計画であった。

初日

 2年ぶりの東又谷は前回と同じくとても明るいし2度目とあって様子が分かっているので気が楽。しかし水量が多い分かなり難しく感じた。
 
 順調に遡行をして核心部である三階棚滝に到着した。今回も直登は無理。分かっている高巻を行ったが、設置されている心もとないロープはいつまで持つのだろう。この高巻はロープがないと難しい。
 三階棚滝の落ち口まで出た。
 ここから作之丞谷の出会いまでは特に問題なく行ける。・・・はずだった。右岸からの成滝を通過したところで雪渓に阻まれた。左岸の高巻はどうかと斜面に乗り上げるが、弁ノ寺滝を越えなくてはならない。水が豪快に落ちていてこれは無理。右岸側に回り込み様子を見ると、急斜面で雪渓にも取り付けない。じゃあいつ崩れるか分からない雪渓トンネルをくぐっていくか・・・?とてもそんな勇気はなかった。水量は多い。トンネルの中はどうなっているか分からない。撤退か・・。
 2年前の同時期に来た時には雪渓がなかった。やはり今年は雪が多かったのだ。
 どうするか?持っていた地図を確認したら、赤倉谷から1801m地点近くの稜線に登りあげることができる。じゃあルート変更で頑張ろう!

 赤倉谷出合いまで戻る。三階棚滝の巻は腕力が必要だった。荷物も重いしね。
 赤倉谷出合いの左岸にいいテン場が見つかった。定番の焚火。約束された天気できれいな星空が広がっていった。

2日目

 気持ちのいい朝を迎えた。いよいよ赤倉谷へ入渓する。
 細かい遡行図がなくどうなることやら。地形図によると二俣を右俣へ進むといいかな。

 赤倉谷へ入るといきなりF1。水量が多くどこを登ろうか。滝の左流線を登りあげた。ふ~。
 少し進んだところでビックリすることがあった。
 実は昨夜右岸側の斜面に焚火の煙のようなものが見えたのだが、まさかね!と思っていた。それがまさかの焚火であったのだ。なんと素晴らしい居住空間が広がっていて、ビニールシートをターブ代わりにしてテントまであった。ここで生活をしているような・・・。人の気配はなかったが、たった今までそこにいたような。沢の中には、缶コーヒーも冷やしてあった。どんな人だろう?
 世捨て人?ではないだろうが・・・。

 赤倉谷を先に進む。F2、F3、F4と滝を越していくとやがて地図通り二俣に来た。
 あ~ここもか。雪渓が立ちふさがっているのだ。二俣を右俣に入りたかったが、急斜面の雪渓のため断念。左俣も雪渓に埋まっているがまだ斜度は緩い。アイゼンを持っていないために無理はできない。踏み抜かないように慎重に雪渓を進んだ。
 雪渓が終わると今度は岩ゴロゴロ斜面。岩雪崩を起こさないように登っていくが、何度も落石を起こした。
 ふ~こわ。
 
 スタートから5時間。北方稜線に到着した。不思議と赤倉谷左俣を詰めた稜線部分だけ、藪が切れていて素晴らしい空間が広がっている。

 正面には剣岳までの北方稜線が見える。毛勝山から大猫山。北には白馬三山が形を変えて座し、朝日岳も立派である。
 先に進みたい。しかしこの到達地点からは激藪で先に進めない。時間もないしここから赤倉谷を下降するしかなかった。

 素晴らしい空間の中でビールタイムを過ごし、赤倉谷を下降開始。
 岩雪崩を起こさないように慎重に足を進めたが、下りの方が大変だ。どうも地バチの巣を崩壊したようで、地バチに襲われるというハプニング。両手を手袋の上から何か所も刺され、その恐怖心といったら。
 ハチの大軍から逃れやっと落ち着いた時には、両手に痛みがきていた。ヤレヤレである。

 雪渓のくだりも怖い。慎重に下り二俣まで戻ってきたときにはホッとした。
 この二俣を右俣に入ると1801m地点近くに出るはずだ。よく観察すると、雪渓が始まる所に大きな滝があることが分かった。まあ~このコースは次回そのうちにね。
 後は順調に気持ち良く下降をして核心部のF1は、住人不在のテン場から取り付けられた道を下り赤倉谷の遡行は終了した。

 焚き木が無くなったので、東又谷を少し下り2日目の夜のテン場を移動した。

3日目

 穏やかな朝を迎えた。
 入山口に戻るだけであるから、ゆっくりと時間を過ごしていたら釣り人が一人やってきた。しばし談笑。地元富山の人だとのこと。この東又谷には初めて入渓したといっていた。
 テン場を撤収し1時間ぐらいで駐車場に着いた。

 今回の冒険はこれでお終い。
 ハチに刺された両手は、はれ上がっている。

 

2018年7月14日~16日 ルート図
赤倉谷

 

車を置いて東又谷の取水口に向かって林道を歩いていく。いよいよスタートだ。
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大明神岳の姿が。残雪期に登ったなあ~。
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東又谷入渓地点。やっぱり水量は多い。
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気持ちよく遡行できるのがいい。
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きれいな淵だ。
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ミズキが咲いていた。
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この滝も直登できた。水量が多い分難しく感じる。
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流れの勢いが強い。ドボンしないように・・・。
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東又谷の第1の核心部である三階棚滝に到着した。
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今回も三階棚滝は高巻。
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すごい迫力だ。
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三階棚滝の高巻を終えて、あとは本日の目的である作之丞谷の出会いまでは簡単!・・と思っていたら雪渓が出現。取り付く島がない。
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左岸を高巻くかと斜面に乗り上げ棚にでたら弁ノ寺谷にも先を阻まれた。右岸側からも雪渓に上がれない。雪渓の下をくぐるのは恐ろしい。
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予定変更で赤倉谷を目指す。赤倉谷の出合でテントを張る。夕暮れが始まった。
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夕焼け。明日の天気も保証されている。
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焚火を囲んでの夕餉。今回はジャガイモやモロコシを焚火で焼いて食した。残念なことに魚影はなし。
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素晴らしい朝のスタート。
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テン場の近くにはエンレイソウが咲いていた。ここはまだ春だ。
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エンレイソウの中を覗くと・・・。
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ニリンソウ
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さあ~スタート。赤倉谷の入渓地点はテン場の向かい側。いきなりF1から始まる。
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F2。
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F3。
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F4。
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日本登山体系にも書いてあったように滝は全部で4つあった。振り返ると正面にモモアセ山。その左奥に毛勝山。
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二俣に着いた。右俣に行きたいのだが、斜度が高い雪渓が続いていて大きな滝(?)も見えるので、左俣を選んだ。これは右俣の様子。
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左俣に入り、これであとは楽ちんと思っていたら雪渓が現れた。どうするか?行くしかない。踏み抜きを注意して静かに雪渓の上を歩いた。かなり急斜面。
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雪渓を抜け一呼吸。ふ~。毛勝山が大きく見えている。
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カラマツソウ
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赤倉谷最後の詰め。急斜面がガレていて・・。
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イブキジャコウソウに癒される。
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稜線に到達した。やったね!剣岳が素晴らしい。久々に剣に出会った。正面左奥が剣岳と八峰。
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右が毛勝山、その左奥に剣岳、左に西谷の頭。
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北には朝日岳。
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白馬三山も見える。
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イワシ雲が楽しい。
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十分な時間を楽しみ下山にかかる。ガレ場で何回も落石を起こし、どうやら地バチの巣を破壊したらしい。地バチに襲われ、手袋の上から何か所も刺された。これは恐怖だった。
雪渓は思っていたより楽に降りることができ、滝も難なくこなしテン場に到着。

 

テントを撤収し、新しいテン場に移動。快適な時間を過ごせそう。
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2晩目のテン場。
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火がよく燃えます。
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3日目の朝を迎えた。
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初めて見るアゲハチョウ。
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最後の東又谷の歩き。
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脱渓した。林道を歩いていたらミゾホウズキが咲いていた。
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クガイソウ
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ギボウシ
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ギボウシの花の中。
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ガクアジサイ
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ガクアジサイ
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