新しい年を迎えて

 昨年11月の終わりごろ、自分にとって大きな出会いが二つあった。一つは新潟へ仕事に行った時のこと。その会社の役員と昼食をともにしながら話題になった「信濃川流域の火焔型土器」のことだ。信濃川流域で生み出された縄文文化を象徴する火焔型土器。信濃川火焔街道なるものがあり、その話に没頭した。火焔街道は、訪問した会社のすぐ近くをスタート地点としている。

信濃川火焔街道のスタート地点となる新潟市歴史博物館「みなとぴあ」

国宝 笹山遺跡出土火焔型土器

 今年少しずつこの街道を回ってみようと思う。すごく知的刺激をいただいた。その刺激を確実に自分のものにしないともったいない。

 そして二つ目は、その2日後の八十二銀行の松下頭取の講演の中で聞いた言葉がきっかけとなって出合った清水英雄氏の著書だ。「ありがとう」を中心にたくさんの有難うにまつわる本を執筆している。その中で学んだ「お疲れ様」ではなく「お元氣さま」という想い。この「お元氣さま」も私にとっては大きく心に残る言葉だった。

 松下頭取も行員には、「元氣で明るく」と言っているとお聞きした。その根底には、この「ありがとう」精神があるのではないかと・・・。「お元氣さま」でこの1年事務所も元氣で明るくいきたい。

 税理士になって40年以上が過ぎた。一つ一つが積み重ねで、得たものが多かった。各企業の後継者にも、こうした宝物を伝えていきたい。それを自分の使命と思っている。

「気」じゃなくて「氣」のこと

 事務所に電話をしたら、明るい声で「お元氣さま」と出てくれた。あまりにも早い対応に、一瞬言葉が詰まってしまった。すごく嬉しかった。そうだよね。「お疲れさま」という負の言葉より「お元氣さま」はずっと明るくなる。そばでその言葉を聞いている人も明るくなる。すると全体が明るくなって、前向きな職場になっていく。

 皆さん、ありがとう。

 「お元氣さま」の「氣」のことについて。意味が三つある。

 一つ目は、日本人の命の源である「お米」に対する感謝の心の表明。

 二つ目の理由は「米」の字を分解すると「八十八」になるが、米を収穫するまでに八十八回も手をかけるというこまやかな心遣いに対する感謝。

 三つ目は「氣」から米を取った「气」は雲を具現化した文字で大自然、大宇宙までも表している。「米」は四方八方にエネルギーを噴出しているさまでもあり、人間は大宇宙からエネルギーを吸収すると同時に、外に向かってもエネルギーを発し続けていることであり、その根源的な意味に対する敬意の表明として「氣」を使っていると、清水英雄氏は書いている。(ありがとう戦略)

 今まで何気なく使っていた「気」もこれからは「氣」だわ。文字に込められた想いや意味を大切にしていくことに気が付いた。

お元氣さま

 清水英雄氏の著書「ありがとう戦略」を読んでいたら、今までのモヤモヤが一気に解消されたことがあった。

 「忙しい」と「疲れた」という言葉についてだ。「忙しい」については、以前から私も知っていたが「心が亡びる」ことで心を失ってしまっている状態。感謝の心、喜びも楽しみもない。「忙しい」は「疲れた」とセットになっていると清水氏は書いている。

 「疲」の字も強烈なマイナスエネルギーを発しているとのことで、分解すると「皮」すなわち皮膚(肉体)が病に覆われているという状態を示しており、極めて縁起の悪い文字だそうだ。  「お疲れさま」はねぎらいの言葉として使われることが多いが、実際にはマイナスのエネルギーを投げかけていることにほかならない。

 以前からモヤモヤしていたことがすっきりした。朝事務所に電話をかけると、「お早うございます」よりも「お疲れ様です」という応対。「朝から疲れてなんかいない」と思いながら、何も言えなかった自分。体調悪く事務所を欠勤中に連絡を入れても、最初に「お疲れ様です」の電話の対応。なんか変、相手のことを見ていないなあ~と感じていた。

 清水氏は言う。「忙しい」や「お疲れさま」に変わる言葉はあるのか?「忙しい」は「充実している」に、「お疲れさま」は「お元氣さま」と言えばいい、と。

 なるほど!なるほど!

 実際に私と同じ疑問を持っていたT不動産グループの社員は、「お元氣さま」に変えた。朝からなぜ「疲れなくちゃいけないのだ」、「ご苦労さま」もなぜ苦労しなくちゃならないのか。「お疲れさま」は「お元氣さま」に、「ご苦労さま」は「ご健闘さま」に変えたら、会社全体が変わったそうだ。

 さてさて、これを読んで誰が一番最初に実行に移せるか?

 「お元氣さま」の「氣」が「気」でなく「氣」であることの意味は次回ね。

SDGsとESG投資

 中小企業もSDGsを意識して独自に取り組むところが結構出てきた。まだ当社はその余裕がない、とか、事業に結び付くことがおかしい等々正しい認識に至るまでに、長い道のりを要する企業もある。

 SDGsとともに、最近はESG投資も注目を浴びている。SDGsは企業の未来に向けた活動であり、ESGは企業の現状についての投資家等(ステークホルダー)にとっての評価である。

 企業のSDGsの取り組みが、企業価値や投資を呼び込む点で評価の対象になってきているのも事実である。具体的には、地域の金融機関が地元企業のSDGsの取り組みを適切に評価し、それに基づく融資や支援をしている。

 先だって地元金融機関の役員と懇談する機会があったが、その中で、特に環境についての危機感を重く持っていて、サプライチェーンに取り込まれている中小企業のSDGsへの取り組みについて注目していることを強調していた。

 事務所とすると、今の、そして今後の社会の在り方を、クライアントに丁寧に説明することにより、環境を含めたSDGsへの理解を深めるとともに、具体的な取り組みをサポートしていきたいと思っている。

カーボンニュートラルに取り組む企業に対する評価

 約1年前の調査結果であるが、「カーボンニュートラルに関する生活者調査」が実施された。その中で、「カーボンニュートラルに取り組む企業に対する評価」として次のような結果が出た。

「応援したい」・・・71.0%

「商品・サービスを購入したい、利用したい」・・・58.5%

「信頼できる」・・・58.0%

「長期にわたって利用したい」・・・55.7%

「就職先として子供に勧めたい」・・・37.1%

 中小企業だってウカウカしていられないんだという意識を高く持つことが大事ですね。

労働力としての市場価値

 「第10回働く人の意識に関する調査」結果が発表になった。公益財団法人日本生産性本部が行った調査である。

 『あなたは勤め先から支払われている給与は、あなたのキャリアや能力、成果から見て、世の中の相場に見合っていると思うか』という質問である。

 結果は、「相場より高いと思う」5.6%、「相場に見合っていると思う」30.3%、つまり相場(市場価値)より給与を多く受け取っている、妥当であるという人が35.9%であった。「相場より低いと思う」と感じている人は38.6%、「わからない」は25.5%であった。

 相場より低いと感じている人のうち、8.0%が現在転職活動をしていて、42.6%の人がいずれ転職をしたいと思っているという結果であった。

 この調査結果を見て、どう考えるかは自分次第かな。

長野優法会講演会(私にとっての温故知新)

 長野優法会講演会第2部は、八十二銀行松下頭取の「私にとっての温故知新」という演題での講演だった。松下戸津織が、これまでの銀行員生活から感じたことを含め、多岐に渡りお話しいただいた。その中で部下育成について「どうやるか」ではなく「何のために」を考えさせることが大切であるというところが非常に印象的であった。

・ 仕事は面白いですか

・ 遣り甲斐はありますか

・ 目先のことに追われていませんか

・ 指示・命令だけで動いていませんか

・ 自分で考え行動することを意識していますか

・ 不平・不満・愚痴がよく出ませんか

・ 評論家になっていませんか、問題を他に転嫁していませんか

・ 「初心」を忘れていませんか

・ これだけは大切にしたいという信念はありますか

・ 仲間やチームの必要性をどう考えますか

・ 将来のことを考えていますか

・ 「こうなりたい」という目標を持っていますか

・ 「人生の当事者」になっていますか

 上記の項目について、「何のために」を基準に現在の自分を振り返って行くと、大きな変化がらわれていくんだろうなあ。

長野優法会講演会(徴収事務について)

 毎年秋に開催される長野優法会主催の講演会。今回は、川口長野税務署長の「徴収事務について」という演題での講演と松下八十二銀行頭取の「私にとっての温故知新」という演題での講演があった。

 「徴収事務について」は、普段なかなか聞くことができない内容で興味深かった。新規発生滞納は消費税(地方消費税のぞく)は57.3%、申告所得税が25.8%で、滞納合計額は722億円となっている。滞納整理の基本姿勢として、  「滞納となった国税については、期限内に国税の納付を行っている大多数の納税者との間の公平性を確保する観点から、早期着手・早期保全に努めるとともに、基本方針のもと、滞納の整理促進に取り組む。」

 そして基本方針とは、

1 滞納整理は、滞納者個々の実情に即しつつ適切に対応

2 大口・悪質滞納事案に対する厳正かつ毅然とした対応

3 処理困難事案に対する組織的な対応

4 消費税滞納事案の確実な処理

 期限内に国税の納付を行っている大多数の納税者との間の公平性を確保する観点 は確かに大事だわ。

近代漆芸名品展

 素晴らしい作品に出合った。仕事で新潟へ足を運んだ時のこと、その仕事先の関連団体が運営する美術館に連れて行ってもらったのだ。

 現在の展示は「20世堆朱陽成 没後70年記念」と題して、20世堆朱陽成の彫漆の作品が並んでいる。漆芸は今まで気に留めていなかった世界だ。しかしです。この美術館で出合った堆朱に、私は魅いせられてしまった。

 漆芸技法はいろいろあるが、「彫漆」という技法に目を見張るものがあった。堆朱、堆黒、堆黄、堆青を何回も塗り重ね、その塗り重ねた漆を掘って行くのだ。紅花緑葉だ。いろんな作品が並んでいたが、私の心をとらえたのは「萬年青 香合」。つややかな緑の葉からのぞいた赤い実が何ともなまめかしかった。幸せを感じる時間だった。

脱炭素社会に向かう潮流と森林・木材の新たな価値

 『脱炭素社会に向かう潮流と森林・木材の新たな価値』という演題で、東京大学教授の高村ゆかり氏の講演を聞く機会があった。

 各企業の認識も大きく変わってきていて、気候変動に対する考慮を企業経営に統合している。 特にサプライチェーン管理、人材・労働者の権利など社会配慮、Scope3(サプライチェーン、バリューチェーン)の排出量にも重きを置いている。そのほか企業の情報開示の強化や金融機関の情報開示とリスク管理も挙げられる。このサステナビリティ情報開示の動きについては、森林・水等自然資本に関する情報開示の指針化の作業が進んでいるとのことである。そしてScope3の排出量をいかに削減していくかは重要である。

 自然資本という観点から、バイオ経済と森林吸収源の促進が不可欠であり、いかに森林を持続可能にして保全をしていくかが大きな課題である。

 中小企業だからと言って脱炭素に向けての活動をしていないと、経済界で相手にされて行かなくなる可能性がある。Scope3を意識してほしい。取引相手とされなくなる可能性も高くなってきているのだ。企業と地域の価値を高める時代に入ってきていることを強く認識しながら、独自にできることを進めていく必要があるだろう。