The History of JRE

 北陸新幹線に乗車したとき、座席のポケットに入っている「トランヴェール」を読むことが楽しみだ。以前に沢木耕太郎氏が「旅のつばくろ」という題でエッセイが掲載されていて、その後「旅のつばくろ」「続・旅のつばくろ」が出版された。すぐに購入し、Kindleでいつも持ち歩いている。

 最近、トランヴェールで「The History of JRE」のページが始まり、第1回が「黄色い線の呼びかけから黄色い点字ブロックに」という題名での取り組み紹介があった。

 以前は「危ないですから黄色い線の内側に下がってお待ちください」というアナウンスが、最近「黄色い線」が「黄色い点字ブロック」に変更になっている。素晴らしいなあ~と思っていた。そのきっかけとなったこととその取り組みが、トランヴェール5月号の「The History of JRE」に掲載されていたのだ。

 2022年11月に、高崎駅のある一人の駅員の強い訴えが、高崎駅社員の心に響き、呼びかけが「黄色い点字ブロック」に変わったそうだ。他の駅でも「黄色い点字ブロック」という呼びかけに変わっているところが多い。こうした呼びかけで、健常者に「点字ブロック」が改めて認識されるようになった。

 上司に「黄色い点字ブロック」という呼びかけへの表現統一の徹底を提案したその駅員も視覚に障害のある人で、駅階段の点字ブロック上に人が集団でいたために迂回して転落した全盲者のことを聞いたのが、今回の訴えのきっかけとなったそうだ。

 JRのこうした取り組みが、少しずつ健常者の意識も変わっていくだろう。

 点字ブロックの正式名称は「視覚障害者誘導用ブロック」という。1965年に岡山県の男性が発明し、1967年に世界で初めて岡山県の交差点に敷設されたという。そして1970年代初めに高田馬場駅で大規模に敷設され、次第に全国に広まった。高田馬場駅は、近くにある日本点字図書館を利用する視覚障害者の乗降が多いからだろう。

 一人の強い想いが全国に、世界に広がっていくのだ。この記事を読んでとても気持ちいが暖かくなった。

言葉の三つの原則

 清水英雄氏の著書「ありがとう戦略」を久しぶりに読み返した。力が湧いてくる。前を向いて生活することができる。そんな内容がたくさん書かれていて、今まで事務所の朝礼でいくつか紹介してきた。

 言葉には三つの原則がある。

 一つ目は「言葉はレストランのオーダーのごとし」という原則。レストランに行って、食べたい料理を注文すれば注文通りの料理が運ばれてくる。言葉と仕事や人生との関係も同様と、清水氏は書いている。すごく分かりやすい。

 「どうして、やることなすことうまくいかないのだろう」「どうして不幸なことばかり起こるのか」というのはそういう状態を注文した結果だからという。つまり「忙しい」「疲れた」「困った」「できない」など消極的、否定的な言葉で「うまくいかない」「不幸」な状態を注文しているということ。

 二つ目は「言葉はエネルギー」という原則があるとのこと。言霊エネルギーがあり、ピンチの時ほど積極的な言葉を使うことによりピンチがチャンスに変えてくれる。

 三つめは「言葉は表情」という原則。積極的で肯定的な言葉を使っている人は表情も明るい。また生き方にも反映するので、生き方を変えたかったら、使う言葉も表情も明るく変えていくことが必要。言葉や表情が明るく変えるからこそ心も人生も明るくなっていくと清水氏は書いている。

 私の部屋にかけてある額の中に書かれている言葉。「楽生 楽笑」「楽しく生きる 楽しく笑う」人生って言葉やその思いがとても力になるという経験を、私もしている。

読書バリアフリー

 「文芸春秋2024年の論点100」という雑誌があることを知って、以来、購読している。100の論点を100の専門家が独自に解説している。読みだしたら面白い。知らなかった世界も知るようになった。

 事務所の職員にこの本を紹介したら、全員が手に入れたいとの希望があり、みんなに配布した。自分で購入しないとそのままになってしまうかもしれないが、興味を持ってくれただけでも嬉しい。結構クライアントに関連することも書かれていて、そのことでクライアントと話が深まるきっかけにもなっている。

 「読書バリアフリー」という法律があることを知ったのもこの雑誌だ。

 2019年に施行されている。すべての国民が等しく読書を通じて文字・活字文化の恵沢を享受することができる社会の実現」を目指している。

 現実的に、視覚障害者等、目で文字を読むことが困難な方々に対して、さまざまな情報を点字、 音声データなどで提供するネットワークの「サピエ」がある。厚生労働省補助事業で日本点字図書館がシステム管理をしている。

 いろんな形で日本点字図書館に関わっているが、今回電話を入れたときに「読書バリアフリー法」のこととサピエのことを話題にしたら、どんどん話が広がっていった。

 作家の市川沙央氏が「文芸春秋2024年の論点100」のなかで「障害の社会モデルを理解して読者バリアフリーの実現を」というテーマで書かれている。市川氏は「読書バリアフリー法」の理念が社会の隅々に普及したとき、読書は真の意味で文化的行為となると結んでいる。

 その役割の一端に「サピエ」があるということを知っていてほしい。

信州日経懇話会第8回例会講演会

 信州日経懇話会の今月例会講演会は、株式会社エラン・代表取締役会長CEO 櫻井英治氏が「エラン29年の軌跡」という演題で講演してくださった。

 起業の舞台裏から事業成長期、成長拡大期に何があったかも含めての、非常に刺激になる内容であった。最後の「経営者に伝えたい6つのこと」については、自分自身のこれからの気持ちの向け方に変化が生じたと思う。

 1 ビジョンや夢を語り将来をイメージする

 2 金銭的自由を手に入れ新たな挑戦を

 3 現状不満足の心で地震と会社の成長を止めない・・・止めると不平不満が出てくる。現状を満足しない組織づくり

 4 社員にインセンティブで夢を共有する・・・持株会など

 5 自身の常識は非常識、日本の常識は非常識

 6 緊張の汗をかかなくなったら交代

 自分がワクワクする計画でないと、投資家もワクワクしない。この一言は印象に残った。上場していない企業にとっても、組織のトップがワクワクするような計画でないと、そこで働く社員もワクワク感はないだろう。

 創成期においては、諦めない気持ち、どうすれば成功するかの一点集中突破、本気で打ち込み周囲の協力を得ること。

 成長期においては、ビジネス本来の目的の共有、ライバルや取引先の分類、外的要因の分析が必要。

 拡大期においては、揺るがない組織づくり、信用と情報を使った拡大戦略、中長期戦略の策定・次なる成長の種まきをしていく。

 最後の質疑応答で、少し前にスタートさせた事業について質問をさせてもらった。遺言代用信託のことである。

 エランは取引先が病院や介護施設が中心である。対象となる人たちには「困ったらエランに相談」と周知しているそうで、そのような関係から遺言代用信託の取り扱いを行っているとのことであった。

長野県経営者協会と中部経済連合会との懇談会

 今回で2回目の中部経済連合会との懇談会が開催された。1年ぶりにお会いする中経連の水野会長であるが、一方的にWebなどでお会いしているので空白期間を感じることがなかった。

 中経連は中部圏における広域的な総合経済団体で、社会経済等に関する諸問題についての調査研究を行い、積極的な提言や活動に取り組んでいる。

 まず水野会長からのご挨拶をいただき、次に碓井会長からのご挨拶と続いた。

 水野会長は中経連の役割として3つの事項を上げていた。

 1 地域と意見交換しながら政策等に対し提言する。

 2 各地域でお互いに参考になるものがないかの意見交換をすいていく。

 3 各地域の連携により活動の高まりを期待する。

 碓井会長は、長野県に集う者が心地よい県になるように努めている。地元をよくしていきたい、地元地元に貢献し、長野県の企業が世界に羽ばたくようになるといい、とおっしゃっていた。

 中経連の事業活動と経協の事業活動の説明の後自由懇談を行った。

 「松本高山Big Bridge」構想の話が出て、以前にユーチューブで見ていた私は、その件について触れさせてもらった。観光地は各拠点のことだけを考えがちだが、県境を越えた面の広がり、すなわち広域でできることの構想を実現できるといいと思っている。

 また中経連は、2024年度税制改正である賃上税制についても提言している。企業分類の「中堅企業」も経産省と一緒に決定したとのこと。経産省からの相談もあったらしい。しかし賃上税制も各種補助金も使いづらいのが現状だ。その点を国に伝えていってもらいたいと思う。

 国際経済交流の活発化等の分野では、外国人留学生域内就職率向上を目的に外国人留学生と企業の相互理解を促進した活動も行っている。長野県においても、このような活動を促進したらいいと思った。実際に、長野県で就職したかった留学生が、県内企業では不採用になり愛知県に就職した留学生もいる。人口減少、人材不足解消にもつながる。

 今回もいい刺激を受けた。中経連の活動を参考に、自分がさらにできることは何か・・・活動を広げていきたい。

信州日経懇話会

 信州日経懇話会第7回例会が開催された。今回の講演会は、合同会社エネルギー経済社会研究所・代表松尾豪氏による『脱炭素社会のカギ「水素」の可能性』という演題での講和であった。

 1 日本の排出量の現状・水素の役割

 2 水素転換に向けた道筋

 3 移行燃料としての天然ガス市場

 と大きく3つのテーマで話をしてくださった。

 クリーン水素は3つに分類される。ブルー水素、グリーン水素、ピンク水素だ。ブルー水素は天然ガス・石炭が原料となる。グリーン水素は水や再生エネ由来の電気を電解法で製造したもの、ピンクは水・原子力発電由来の電気を電解法で製造したものということも初めて知った。

 ブルー水素の場合CCSとの組み合わせが必要ということだったので、日本におけるCCSの取り組みはどこまで進んでいるのか、またLNG発電所との関係を質問してみた。6月に苫小牧のCCSの視察を控えているということもあって。

 松尾氏の回答は、苫小牧に施設があるが最終的には海外に持っていくしかないということであった。

 脱炭素を見据えたうえでの取り組みが非常に興味深かった。

新しい時代の働き方と労働法改革の方向性

 東京大学社会学科科学研究所の水町教授から「新しい時代の働き方と労働法改革の方向性」という演題での講義を受けた。労働法改革の背景から始まり近時の労働法改革の動きに関する内容である。

 「2024年問題」もあと数日でスタートする。関係する3業種は、事務所のクライアントでもある。どのように対応していけばいいかの内容もあり、大変具体的で勉強になった。

 自動車運転業務に関して、長野市内においては、タクシーの早朝予約は受け付けない、日曜日のバス全面運休という事態になっている。一般生活に支障きたす状態だ。水町氏は賃金を上げないと人出不測のままでこの状態が続くだろうという。

 企業は、安い非正規社員に頼り、賃金が上がりづらい構造になってしまっているのが問題だと指摘していた。結果、外国人労働者にとっても日本で働く魅力が低下しているそうだ。

 雇用保険改正法の内容の中で、個人に対する教育訓練やリ・スキリングによる支援が充実した。まさに「人への投資」の強化だ。企業側はうかうかしていられない、というのが個人的感想。

 最後の「これからの企業経営において大切になる視点」は、真剣になって取り組んでいかないと企業は淘汰されるという危機感が募った。

 あっという間の充実した研修であった。

「中部経済連合会なでしこの会」と「長野県経営者協会女性委員会」との懇談会

 中経連「中部の魅力を語るなでしこの会」との初の懇談会が開催された。私にとっては、昨年度の「中部のイイトコ再発見 女性リーダーが語る魅力」のセッションにWebで参加したことが「なでしこの会」との出会いであった。 

 それから1年後に懇談会が実現できたことに感慨深い。

 経協女性委員会の活動報告、なでしこの会の活動報告を行った後に自由な意見交換がなされた。「働きやすさ」に関して、「なでしこの会」から出された次の3点に話題が集中した。

  ① 制度について

  ② 環境とマインド

  ③ 管理職

 まず①制度については、制度があるのに使いづらい。こうやったら制度を使いやすくなったという事例もあり、私がかかわっている「長野県少子化・人口減少対策戦略方針(案)」に織り込まれている制度の利用は机上の空論感がさらに増してしまった。男性育休取得率が90%近い企業のケースとして、配偶者の妊娠が分かった時点で、上司に報告。出産までの時間をかけて育休を取る調整を図っていく。『育チャレ』という名称でやっている。いい勉強。

 ②の環境とマインドについて、女性管理職第1号の立場になると「失敗できない」という気持ちが先立ち引き受け手がない。しかし「いやいやどんどん失敗してもらいたい。後に続くことが大切」というマインドを育てることが大切。

 ③の管理職になりたくない人が男女問わず増えているという課題。これは責任を取りたくないという気持ち以上に、現在の忙しい上司の姿を見ている。つまりこんなに忙しい上司のようにはなりたくない、という気持ちがあり、長時間の働きを評価する会社にはいたくない。実力を認められる会社で働きたいと考えている若者が多い。上司のマネジメント力が必要で、上司が一緒に責任を取るという寄り添いがあって、管理職になる決心に近づいていく。

 非常に刺激的であった。

電力中央研究所

 電力中央研究所の視察に行く機会をもらった。確定申告が終了したので、安心して視察に出かけることができた。

 電力中央研究所(電中研)は、電気事業の運営に必要な電力技術等に関する研究を行い技術水準の向上や電気事業の効率化に寄与するための研究機関である。アセスメントの役割を担っている。これらの研究成果が、ガイドラインにもなるとのことであった。

大きく5か所の実験棟を見せてもらった。

1 乱流輸送モデリング風洞

 大気中の気温分布・気流分布・気流乱れを精密に再現できる風洞で、火力発電所や原子力発電所の気流解析や拡散解析等を行っている。

2 南第8実験棟での「共振振動台」

 原子力発電所の重要機器や建屋を対象とする高加速度振動に対する耐震安全性の評価を行っている。

共振振動台の実物で説明を受けたが、巨大な装置だった。

3 「ヘリカルX線CTスキャナー」

 活断層関連研究設備である。強制振動を起こさせ、断層・浸透・ガス透気試験で、物質内部の破壊現象や流体挙動に伴う変化を、CTスキャナー通して見極めている。

 その場で実験をしてくれて、CT画像で断層変異を与えた岩盤内の亀裂を見せてもらった。

4 「津波・氾濫流水路」

 原子力規制委員会のもとで、新しい規制基準の適合性審査が行われている。そのための陸上氾濫した津波現象を再現するために導入している水路。津波に対する電力施設や設備の健全性・頑強性の実証試験に活用している。

ここでは津波を再現してくれた。大きな丸太を津波漂流物として衝突させ、衝突力の推定なども見せてくれた。

5 「空気力載荷試験装置」

 雪が着いた送電線で強風下で発生するギャロッピングと呼ばれる大きな振幅でゆっくり振動する現象を再現することができ、ギャロッピングを抑制する対策法の効果を検証するとのこと。

ギャロッピングの説明中。

 鉄塔部材に降雨による水みちができた状況下で発生するレインバイブレーションと呼ばれる現象実験も見せてもらった。

 電中研の我孫子地区は事前・環境科学研究の拠点となっている。電力施設の自然災害軽減技術やメンテナンス技術。放射性廃棄物処分技術、地球温暖化問題への対応その他サステナブル研究所として取り組んでいることがよくわかり、実際に触れることができ、さらに自分の知識の深まりがあった。

確定申告

 個人の確定申告期限は今日の3月15日。何とかすべて終了することができた。みんな毎晩遅くまで頑張ってくれた。それぞれが責任を持ち、お互いに気を配りながら支えあって申告を進めてくれた。

 忙しいときこそ、その人の人間性が表れるものだ。誰一人として愚痴を言わずに、そしていつも明るく、納税者のために事務所のために働いてくれた。感謝である。また納税者の方々からも温かい言葉をいただいて、みんなも励みになったと思う。

 この時期の仕事は、いつもより条文を調べることが多い。担当者は責任をもって条文で確認しながら仕事を仕上げてくれた。忙しいだけでなく勉強にもなるときである。仕事に追われてしまうと、取り扱いを調べるのも億劫になり、多分こうだろうという思い込みで進める職員はいなかった。丁寧に仕事をすることが大切だ。

 皆さんお疲れ様。週末2日間をゆっくりと休んで、来週からまたお願いします。忙しい時が5月一杯続くのでね。