10年前のレジュメ

 Yさんという方から今後のことについて相談に乗ってほしいとの連絡があった。私は人の顔と名前を覚えるのが苦手で、Yさんとは初めてお会いするんだなと思っていた。

 Yさんは70代前半の品のいいご婦人であった。相談内容は相続関係。自分の持っている財産はわずかであるが、娘たちが揉めないように今のうちから何とかしておきたい、ということであった。そして唐突に差し出されたレジュメ。それは10年前にあるところで私がセミナーの講師を引き受けた時に作成し、使用したものであった。

 ヨレヨレになっていたが懐かしかった。

 Yさんは言う。「先生のセミナーを受けて、何回もこの資料を見直ししながら、今後どうしたらいいんだろう・・、と思っていました。」と。10年前だから現在と時代も変わっていて、Yさんの考え方だって大きな変化があったと思う。けれどYさんにとってこのレジュメは一つの拠り所だったのだろう。

 私は嬉しかった。お互いに10年間元気であってここで再開できたこと。10年間レジュメを片手にいろいろ考えていたが、思い切ってYさんが私を訪ねてきてくれたこと。そして10年前のレジュメを大切に活用していてくれたこと。

 Yさんの話を聞きながら、今後のYさんが安心して生活できるような話をさせてもらった。

 税理士は税金を計算するだけでなく、いずれは相続を迎えるにしても、どうしたら平安な気持ちで生活できるかの相談に乗ることの大切さも感じている。無料相談をどんどん活用してほしいと思う。